エッシャー階段の家」 トリックアート絵画

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エッシャー階段の家」 トリックアート絵画

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 この絵の中の生き物「ヴェンテルテーフィエ」というのは、エッシャーが考案した想像上の生きものです。『階段の家』というタイトルの1951年のリトグラフ作品に登場します。脚は6本、エビかムカデを思わせる殻っぽい体と、大きな球形の頭を持っています。面白いのがその移動の仕方で、普通に歩くこともできるし、ダンゴムシみたいにくるくる丸くなった状態で転がって移動することもできます。リトグラフ『階段の家』の中では、ひとつの壁面が同時に床でもあり壁でもあるという不思議な空間を、たくさんのヴェンテルテーフィエたちが歩き回ったり、転がり回ったりしています。


階段の家
TRAPPEHUIS
1951

気持ち悪い中にかわいさも感じられるこの生き物を作品に登場させるにあたって、エッシャーはわざわざ粘土で模型をつくり、それをスケッチするという念の入れようでした(ブルーノ・エルンスト著『エッシャーの宇宙』111ページ)。

この奇妙な生き物の生態について解説した文章つきのリトグラフ作品も制作されています(『ヴェンテルテーフィエ』1951年)。その解説文によると、この生き物には pedalternorotandomovens centroculatus articulosus(ペダルテルノロータンドモーヴェンス・セントロクラートゥス・アルティクロースス)という長ったらしい学名がつけられています。この学名の意味はよくわかりません。通称は wentelteefje(ヴェンテルテーフィエ)あるいは rolpens(ロルペンス)。

オランダ語の辞書を引いてみると、wentelteefjes という単語が出てきます。その意味は「牛乳と卵を混ぜたものに浸したパンに、シナモンと砂糖をかけてバターで焼いたもの」。つまりはオランダ風のフレンチトーストのことみたいです。オランダ風フレンチトースト?
この単語を分解してみると、「回転する、転がる」という意味の wentelen という動詞があって、teefje のほうにはどうも「雌の子犬」という意味があるらしい。つなげると「回転する雌の子犬」。何なんでしょうか。


回転虫
WENTELTEEFJE
1951

もうひとつの通称 rolpens のほうは、辞書には「牛の第一胃に肉を詰めたもの」とあります。ソーセージみたいなものですかね。
一方、 rollen という動詞があって、これも「転がる、回転する」という意味です。 pens は「第一胃」のこと。くっつけると「回転する第一胃」ですね。

結局、 wentelteefje も rolpens も、「転がる、回転する」といった意味の動詞と、オランダ独特の食べ物の名前を引っかけたエッシャーの言葉遊びのようです。英語訳では curl-up(カールアップ)という言葉が当てられていて、日本語訳としては「巻き上げ虫」なんていう名前がつけられているようですが、「回転虫」というのがいいのではないかと個人的には思っています(回虫ではなく)。

生態解説つきのリトグラフ作品『ヴェンテルテーフィエ』の文章の内容は、いろんな本を見てもどこにも紹介されていません。そこで、自力でオランダ語から日本語に翻訳してみることにしました。ちょっと怪しい部分もありますが。エッシャー独特のユーモアが感じられますね。オランダ語の原文と一緒にご紹介します。


オランダ語原文
De Pedalternorotandomovens centroculatus articulosus ontstond (genaratio spontanea!) uit onbevredigdheid over het in de natuur ontbreken van wielvormige, levende schepselen met het vermogen zich rollend voort te bewegen. Het hierbij afgebeelde diertje, in de volksmond genaamd "wentelteefje" of "rolpens", tracht dus in een diepgevoelde behoefte te voorzien. Biologische bijzonderheden zijn nog schaars: is het een zoogdier, een reptiel, of een insekt? Het heeft een langgerekt, uit verhoornde geledingen gevormd lichaam en drie paren poten, waarvan de uiteinden gelijkenis vertonen met de menselijke voet. In het midden van de dikke,ronde kop, die voorzien is van een sterk gebogen papagaaiensnavel, bevinden zich de bolvormige ogen, die, op stelen geplaatst, ter weerszijden van de kop ver uitsteken. In gestrekte positie kan het dier zich, traag en bedachtzaam, door middel van zijn zes poten, voort bewegen over een willekeurig substraat (het kan eventueel steile trappen opklimmen of afdalen, door struikgewas heendringen of over rotsblokken klauteren). Zodra het echter een lange weg moet afleggen en daartoe een betrekkelijk vlakke baan tot zijn beschikking heeft, drukt het zijn kop op de grond en rolt zich bliksemsnel op, waarbij het zich afduwt met zijn poten, voor zoveel deze dan nog de grond raken. In opgerolde toestand vertoont het de gedaante van een discus-schijf, waarvan de centrale as gevormd wordt door de ogen-op-stelen. Door zich beurtelings af te zetten met een van zijn drie paren poten, kan het een grote snelheid bereiken. Ook trekt het naar believen tijdens het rollen (b.v. bij het afdalen van een helling, of om zijn vaart uit te lopen) de poten in en gaat "freewheelende" verder. Wanneer het er aanleiding toe heeft, kan het op twee wijzen weer in wandel-positie overgaan: ten eerste abrupt, door zijn lichaam plotseling te strekken, maar dan ligt het op zijn rug, met zijn poten in de lucht en ten tweede door geleidelijke snelheidsvermindering (remming met de poten) en langzame achterwaartse ontrolling in stilstaande toestand.

日本語訳
ペダルテルノロータンドモーヴェンス・セントロクラートゥス・アルティクローススは、自然界における車輪の形の欠如に対する不満から(自然発生で!)生まれた、転がりながら前進する能力を持った生き物である。ここで描かれている、俗に「ヴェンテルテーフィエ」 とか「ロルペンス」と呼ばれている小動物は、その存在によって、強く感じられてきた不足感を満たそうとしているのである。生物学的な詳細はまだ乏しい。これは哺乳類なのか、爬虫類なのか、それとも昆虫なのか? この生き物は、角質化したいくつもの関節から形成された細長い体と、3対の脚を持っている。その脚の先端は人間の足との類似を示している。頑丈で曲がったオウムのようなくちばしを備えた、ずんぐりした丸い頭部の中央には、球形の眼がついている。その眼は、柄のようなものの先にくっついていて、頭の両側で遠くに突き出している。この動物は、体を伸ばした姿勢で、ゆっくりと、慎重に、その6本の脚を用いて、どのような表面の上でも前進することができる(必要であれば、急な階段を上ったり下りたりすることもできるし、茂みをかきわけて突き進んでいくことも、岩場をよじ登っていくこともできる)。いざ長い道のりを移動しなければならなくなると、またその目的のために比較的平坦な道が開けているような場合には、この生き物は自分の頭を地面に押しつけて、素早く、くるくると自分の体を丸める。それに際しては、自分の脚で――脚がまだ地面についている間は――自分の体を突き放す。ぐるぐる巻きの状態では、この生物は円盤状の形態を示す。そして、眼球のついた柄が車軸を形成する。この生物は3対の脚を順々に踏み切ることによって、すごいスピードを出すことができる。また、好みに応じて、回転の最中に(例えば斜面の下降の場合とか、 あるいは速度を落とすためとかに)脚を引っ込めて、フリーホイーリングでさらに先へと進んでいくこともある。さらに、何かのきっかけがあると、この生き物は2通りの方法で再び歩行姿勢に変化することができる。第一には、いきなり自分の体をパッと伸ばすという方法である。しかし、この場合には、背中を下にし た状態になる。第二には、徐々にスピードを落とし(脚を使ってブレーキをかける)、静止した状態でゆっくりと後ろ向きに展開していくという方法である。




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この記事へのコメント
<strong>エッシャー</strong>「<strong>階段の家</strong>」 <strong>トリックアート</strong><strong>絵画</strong>: トリックアート 〜だまし絵の美術館〜
Posted by 女児 水着 at 2013年07月21日 21:01
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